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2019
02

スイス中銀の上限撤廃でフラン急騰、何が起こっている?

スイスは、高度な金融サービス業や高級時計に代表される付加価値の高い製造業を基幹産業としており、比較的好調な経済を維持してきました。しかも、スイスは独自の通貨であるスイスフランを採用しており、ユーロ圏には入っていません。欧州債務危機が勃発すると、各国の投資家は安全資産としてこぞってスイスフランを購入しましたから長期間にわたってスイスフラン高、ユーロ安が続いてきたのです。


 過度にスイスフラン高が続くと、スイスの製造業は不利になってしまいます。このため、スイス中銀は、1ユーロ=1.2スイスフランという為替上限を設定し、これ以上、スイスフラン高になった場合には、無制限にスイスフラン売りの介入を実施する方針を明らかにしていました。自国通貨を売りたければ、輪転機を回してお札を刷ればよいわけですから、理論的には無限大に介入が可能です。このため、この水準以上までスイスフランを買う投資家は現れず、為替は3年間ほど1ユーロ=1.2スイスフランの前後で安定してきました。


 しかし、万能に見えたこの方策にもやがて弊害が目立つようになってきました。欧州の景気低迷が顕著になり、再びスイスフランに買いが集中し始めたのです。1ユーロ=1.2スイスフランの水準を維持するためには、さらに大量のスイスフランを発行し、ユーロを購入する必要に迫られました。


 スイス中銀にしてみれば、今後価値が下がると分かっている通貨を大量に抱え込むわけですから、将来の損失につながってしまいます。これ以上の介入はリスクが大きいとして、設定していた上限を自ら撤廃してしまったのです。当然、市場では堰を切ったように、スイスフラン買いが始まりますから、為替は急上昇となりました。


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